マンション売却をめぐるサブリース会社とのトラブル

事例
Bさんは6年前に築24年のファミリータイプのマンションを1室購入しました。
購入価格は2800万円でした。
仲介業者(C社)は「月々のローンは家賃でまかない、ローンがなくなれば家賃はまるまる収益になるし、将来的に自分で住むこともできる」と資産性を強調し、「途中で売却した場合も高値がみこめる」と近隣の同様な物件の成約事例をパンフレットで示してきました。
Bさんはなるほどと思い、築は古いものの立地が都心の比較的人気の高い住宅地にあり、月々もプラス収支になるということで購入を決めました。
そして、初めての不動産投資だったので、手間いらずが良いとC社のいうままにサブリース契約を結びました。
それから6年が経ち、マンション価格の値上がりの状況や東京オリンピック後の値下がりへの不安から、マンションの売却を考えました。
ところが、サブリース契約を結んでいたC社が売却の障壁となって立ちふさがることになってしまったのです。

驚きの売却査定結果

Bさんは自分の保有している物件がいくらくらいで売れるのか確かめようと、不動産会社のサイトから簡易査定を申し込みました。大手不動産のサイトから直接申し込むものや、いくつもの不動産会社に一括査定を申し込むものなど、いくつかに登録してみました。

すると早いものでは即日、遅くても数日以内に各不動産会社から連絡が次々に入ってきました。
そこでの査定結果はBさんを大いに喜ばせるものでした。というのも低く見積もってきたところでも3000万円、高いところでは3500万円を超える査定だったからです。
Bさんの購入価格は2800万円、ローンがまだ2600万円ほど残っていますが、充分に売却益が出る計算です。

この価格なら問題ないと早速Bさんは購入時に物件を紹介してきて現在はサブリース契約を結んでいるC社に売却したい意向を伝えました。
ところがC社は「そんな高くは売れませんよ、オーナーチェンジでの査定になりますから空室前提の査定より安くなります」というのです。

確かにBさんは現在の状況はあまり気にとめず査定に出していました。というのも空室かどうかで値段が変わるとは知らなかったからです。
ただ、「投資物件として買うなら入居者が入っているほうが良いだろうし、そう大きく値段は変わらないんじゃないか」とも思いました。
そこで今度は「オーナーチェンジ」であることに注意して査定を申し込んでみました。

オーナーチェンジでの査定

オーナーチェンジでの査定結果はBさんを驚かせるものでした。
なんと査定価格は低いもので2300万、高いもので2900万ほどに下がっていたからです。
なぜこんなに結果になってしまったのでしょうか。

それは空室物件とオーナーチェンジ物件では査定する計算式に違いがあるからです。
空室物件(あるいは空室になる予定の物件)では「坪単価」を基準に計算します。
例えば、「このあたりの土地の坪単価が250万なのでこの部屋の広さならこのくらいになります」という具合です。坪単価の設定に差があると査定結果も変わってきます。

対してオーナーチェンジ物件だと「利回り」を元に計算します。ある物件を利回り7%で売り出すなら2800万円での価格設定、5%なら3500万円での価格設定というわけです。
オーナーチェンジ物件は買主が直接住むわけではなく収益性に着目するので「利回り」を指標として市場にだすことになるからです。

サブリース会社との交渉

Bさんはかなりがっかりしました。2400万円ならローンを完済できないので問題外ですが2900万円なら売却益がでるので、一度それくらいの値段で売りに出してみようかと不動産会社に話を聞きに行くことにしました。

そこでの話はさらにBさんをびっくりさせるものでした。オーナーチェンジ物件のなかでもサブリース契約中の物件はかなり買い手が限られ、価格もさらに低くなるというのです。
サブリースの分、収益性が低くなるからという理由でした。
ただ不動産会社がいうには「サブリース契約書に解約条項があるなら解約してみたらどうですか」とのことだったので、今回売れなかったら空室リスクは生じるものの、今までずっと入居者が途切れたこともなかったので、サブリースは解約しようかと思い契約書を確かめてみることにしました。

契約書には「双方、3ヶ月前に書面で申し出ることで解約できる」という項目がありました。
BさんはC社に連絡して「サブリースをやめようかと思う」と申し出たところC社は態度を豹変させてきたのです。「サブリースは解約できません」の一点張りだったので、BさんはC社へ足を運んで話し合うことにしました。

まずBさんは売却を視野に入れていること、サブリースである必要性を感じなくなったことから、契約書に書いてある通り解約を申し出たのですが、C社は「契約書にどう書いてあろうが、当社は賃借人の立場ですので、一方的に解約はできません。そういった判例もありますので」というばかりです。
契約書は関係ないという言葉に驚きつつも、Bさんは「別におたくを外したいわけじゃない、これからも管理はお願いしたいから契約形態を賃貸管理にかえたいだけなんですが」といっても「それもできません」とつっぱねてきました。
さらに「他社で売りに出そうとしてもうちは必要書類等一切出しません。そうすると売ることはできないと思いますよ」などととりつくしまもありませんでした。

色んなところに相談してみたが

BさんはC社の言い分が通るものなのか、不動産に関する相談窓口へ聞いてみることにしました。
不動産トラブルの相談窓口はいろいろあります。

【東京都の場合】

その他にも不動産トラブル対応のサイト、NPO、不動産専門の弁護士事務所などがあります。

Bさんはまず、東京都都市整備局、不動産適正取引推進機構、宅建協会、と見解を聞いて回りました。
いずれも宅建業者に関する組織で丁寧に対応してくれましたが「賃貸管理については宅建業ではないので管轄外である。弁護士に相談したほうがよい」との回答でした。
また、国交省は賃貸住宅管理業の登録制度を設けているのですが、加入が義務付けられているわけではなく罰則もないとのことでした。

次に不動産トラブルを専門にうたっている弁護士をいくつかあたってみました。しかし「サブリース会社が賃料を支払わないなどの理由がないと、法律的には解除は難しい」と言われてしまいました。

最後に不動産トラブル解決のサイトやNPOに問い合わせてみると「必ずサブリースをやめることはできます」というのです。
藁にもすがる思いで話を聞くのですが「直接交渉するより間に他の不動産会社を挟んだ方がよい」と不動産会社を紹介されました。
ところが紹介された不動産会社と話をすると「サブリースはつけたままで売却できる相手を探しましょう」というのです。

結局サブリースを外すということではなく、物件を売却できるということでしかないのです。

不動産会社の対応

Bさんは、サブリースの解約は難しいと半ば諦めつつ、この際サブリース付きで安くなったとしてももう手放してしまおうと考えました。

そこであらためて売却の媒介先を探そうと不動産会社をあたりました。
Bさんがサブリース中なんですが、と説明するとどの会社も「それは外せないんですか?」「外せないってことはないと思います」と口を揃えます。「当社が交渉しますので、媒介契約だけ結んでくれませんか」というのです。
しかし、それで任せてみると「やはり難しいですね。サブリース付きでも買い取るという業者があるのでそちらで売却にしませんか?」という流れになるのがお決まりでした。

業者買取は買った業者が利益を上乗せして転売したり、仮に何年も保有することになってもいずれリノベーションして高値で売却できればよいという考えで買い取るものなのでどうしても相場より安くなります。至急お金が必要な場合を除くと業者に買い取ってもらうメリットはありません。

結局Bさんは立退料を150万円ほど支払い、サブリース契約を解除しました。サブリースの付いていないオーナーチェンジとして売りに出そうか、いずれ賃借人が退去したら空室として売りにだそうかと選択肢を増やして、現在も物件を保有中です。
150万は痛手でしたが、売却戦略を考えると賢明だったと言えるでしょう。

まとめ

1、空室前提の物件査定は坪単価、オーナーチェンジの査定は利回りを基準になされます
2、オーナーチェンジであってもサブリース物件は敬遠され価格も下がります
3、サブリース契約をオーナー側から解除しようとしても非常に困難です
4、実際に住んでいるわけではなくても形式的な賃借人として保護されるからです
5、賃貸管理に関する免許や罰則はないので行政罰は期待できず、最終的に訴訟するしかなくなります
6、売却戦略を検討した時に、立退料を払ってでもサブリースを外しておくのも一つの手段です。