契約の取り消し

事例

Cさんは、不動産会社から投資の勧誘にあって話を聞きに行く事にしました。おどろいたことに話をする場所というのが居酒屋だったのですが、そのときはCさんは「そんなものなのかな」と思っていました。酒を酌み交わしつつ話を聞いたのですが、そのときは物件を購入するのは断りました。
後日、再び同じ営業マンと会うことになったのですが、今度もやはり場所は飲み屋でした。
お酒を一緒に飲むのも2回目で打ち解けた雰囲気になり、気が大きくなっていたのも手伝って、マンション購入の契約書にサインをしてしまいました。
しかし、翌日冷静になったCさんは早まったことをしたと思って契約を取り消したいと伝えましたが、応じてくれなくて困っています。

不動産取引とクーリングオフの制度

飲み屋で商談なんてそもそもおかしな話です。普通は不動産会社の営業所や、外で会うにしてもお酒の入らない喫茶店などで話をするのがまともな流れでしょう。
しかし、Cさんのケースのようにお酒を飲みながら話をする不動産会社が事実存在するのです。
飲酒してしまうとどうしても冷静な判断ができなくなるので、そのような場所で勧誘されるのは始めに断っておくべきでした。通常、詐欺や強迫など相応の理由がない限り、契約書にサインしてしまうと法的にその内容を守らなければならなくなります。

ではCさんは契約を取り消すことができないのでしょうか?
意外と知られていませんが、不動産取引においてもクーリングオフの制度が用意されています。
クーリングオフというのは、一般の消費者が、特定の商品購入や権利・サービスを受ける契約をした際に、一定の期間内であれば理由なしに解約のできる制度のことです。

クーリングオフは冷却期間という意味ですが、本当にその商品等が必要だったか冷静に判断する期間を設ける意味で制度化されています。
街のお店に行って、自ら商品を購入した場合には適用されませんが、訪問販売などでよくわからないまま購入してしまった消費者を保護しようとするものです。

ただし、不動産取引でクーリングオフができるかどうかはいくつか条件があります。
その条件を確認しておきましょう。

1、売主が宅建業者であること(個人の売主を仲介するだけの場合は適用されません)
2、買主が宅建業者でないこと
3、クーリングオフが出来ることを、売主から書面で告げられてから8日以内であること(書面を渡された日を含みます)
4、不動産の引渡しを受けておらず、その代金の全部を支払っていないこと(一部を支払っただけなら適用されます)

次にどこで契約したかも重要です

クーリングオフが適用されない場所
1、不動産会社の事務所やモデルルーム、案内所で契約した場合
2、買主が指定して、買主の自宅や勤務先で契約した場合

上記の場合は、買主が積極的であり、冷静な判断がなされるであろうという理由でクーリングオフが適用されません。
上記以外の場所、例えば買主が指定した喫茶店などで契約する場合には適用されることになります。

さてCさんの場合ですが、今回契約した物件は不動産会社が保有しているもので、自ら売主になっていました。Cさんは契約の翌日に取り消しを申し出ていますが、そもそもCさんはクーリングオフについて書面で知らされていません。
代金は支払っておらず、契約場所は居酒屋です。

以上からCさんの場合、クーリングオフが適用されますので、契約が初めからなかったことにできます。

ここでひとつ重要なのが、Cさんは電話で取り消したい旨を伝えただけですが、クーリングオフの申し出は書面で行う必要があります。内容証明郵便で送っておくと確実でしょう。
ちなみに8日以内に郵便を発信すれば(消印が押されていれば)良いので、実際に相手方に届くのが8日を過ぎても大丈夫です。

クーリングオフの期限が切れた後の解除

クーリングオフの書面が手渡されてから8日が過ぎると、無条件解除はできなくなります。
その場合、解除するには手付金を放棄しての手付解除になってしまうので、払ってしまった手付金は戻ってきません。また、手付金を交付していなくても違約金が必要になってきくるでしょう。
ただ、今回のケースのように酒席で契約した場合、契約内容をきちんと判断する能力に欠ける状態であったとか、業者側に酒の勢いで契約させようとしたなどの事情が認められると、民法上の契約の無効や取り消しを主張できる余地はあります。
とはいえ裁判上でそれらを主張、立証していくのは難しい道のりになりますので、それを交渉材料に監督官庁への陳情などを交えて不動産会社と話をすると時間や金銭的に効率が良いでしょう。

まとめ

1、不動産取引にもクーリングオフ制度が適用されます。
2、クーリングオフの期間は書面を交付された日を含めて8日以内です。
3、クーリングオフの手続きは内容証明郵便でしましょう。
4、クーリングオフオフには条件があるので確認しておきましょう。
5、クーリングオフ期間が過ぎると手付解除か民法上の無効・取り消し事由で解除の交渉をしましょう。